システム農学
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研究論文
棚田における土壌流出と土壌流亡予測式の係数算出
吉迫 宏小川 茂男塩野 隆弘
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2009 年 25 巻 4 号 p. 205-213

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抄録

多面的機能維持増進調査(農林水産省)の一環として中国四国農政局が2006年6月~2007年8月に島根県出雲地方の棚田2地点(耕作田/遊休田)で実施した土壌流出観測のデータを用い、各観測水田からの20分間隔の土壌流出量を求めた。このデータと観測水田最寄りの水文水質観測所の降水量データ(60分間雨量)を用い、冬季の欠測期間を含む1年間(2006年8月~2007年8月)の土壌流出量を全期間、一連降雨時、及び耕作田については代かきとその前後期間別に集計した。また、一連降雨前の観測水田からの流出水の有無を把握した。その結果、観測水田においては耕作田、遊休田とも欠測期間を含む年間総土壌流出量の7割前後が一連降雨時に流出していること、土壌流出は湛水状態において生じていること、及び耕作田においては代かきとその前後期間の土壌流出は小さいことを明らかした。また、USLE(汎用土壌流亡式)を基として日本の実情に適合するよう係数の一部を修正してとりまとめられた土壌流亡予測式を対象に、耕作田における予測式の係数を畑地に準じて算出した。特に、従来求められた事例の少ない水稲・水田の作物係数Cと保全係数Pに関する値を、両者の積である作物・保全係数CPとして通期(全観測期間)、作付期(4月20日~9月30日)、及び非作付期別に集計した土壌流出量と降雨係数Rから求めた。係数の算出にあたっては、観測水田において一連降雨毎に降雨侵食指数EI60と土壌流出量を求め、両者の間に高い相関関係があることを確認した。また、得られた作物・保全係数CPから観測水田(耕作田)は原地形のまま傾斜畑として利用する場合と比して現況の棚田としての利用は土壌保全的であることを示した。

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© 2009 システム農学会
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