システム農学
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研究論文
ベトナム中部タムジャンラグーンにおける漁業環境と底質特性変化
岡本 侑樹田中 樹水野 啓NGUYEN Phi NamLE Van An
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2012 年 28 巻 1 号 p. 19-27

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抄録

本研究は、ベトナム中部汽水潟湖の漁場において底質環境特性の変化を長期モニタリングによって明らかにしたものである。底質の酸揮発性硫化物量(以下AVS)と粒形組成について一定の季節間隔で3年間調査した。前回の報告同様、底質内のAVS 量は養殖時期の進行と同時に増加した。しかしながら、養殖期間終了後の雨季、洪水を経験することにより、多くの漁場でAVS 量の減少が見られ、それらの底質の粒形組成には明らかな変化、置き換わりが見られた。また、いくつかの漁場では、一年を通した底質の変化および雨季洪水により、底質組成が一定になる底質の動的平衡があることが見出された。しかしながら、一部の漁場では、乾季において貧酸素水塊の発生が確認されるなど深刻な事態も確認された。これらの結果から、AVS 量の減少および低AVS 量に留める底質動態機構について3つの仮説モデル: [a]底質の置き換わり、組成変化がなく、硫化水素ガスが水中に放出されるモデル、 [b]雨季洪水による強いかく乱に伴う底質の置き換わりが生じるモデル、[c]適度のかく乱によって経年的に底質組成の変化がおこり底質の動的平衡が見られるモデル、が示された。以上より、いくつかの漁場では雨季・洪水による底質変化によりAVS量を低く保ち、底質回復機能を持つ可能性[b]が示された。一方、養殖期間中に高いAVS 量や貧酸素水塊が確認された漁場および、AVS 量減少における底質動態仮説モデル[a]が起こったと考えられる漁場において、漁業生産へのリスクや影響が懸念される。

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