抄録
近年の激甚降雨の多発にともない傾斜畑では降雨時に土壌粒子・栄養塩等を含んだ表面流出の発生頻度が高まり、流域排水系、居住地、交通路や湖沼・河川等の自然生態系への流れ込みによる負荷増大が危惧される。土壌流出や栄養塩流出を評価するための観測実験には、従来、人工の傾斜枠圃場が用いられる。この方法では、実際の生産現場の環境条件を必ずしも充分に再現できないことに加え、土壌流出量や栄養塩流出量に関する詳細な時間変化は解析できない。一方、露地野菜畑等の生産現場での実測には、不時の豪雨にともなう突発現象を捉えることの困難性、すなわち表面流出発生の現場を直接観察できないこと、そしてそれに付随した各種観測機器の保守やデータの品質管理上の問題が生じやすく、研究効率の低下を招くことが多い。そこで、傾斜畑で表面流出量測定と水質測定のための試料採取を行う際に、表面流出や土壌侵食の発生状況を自動的にインターバル撮影する装置を開発した。この装置を屋外の傾斜枠圃場および群馬県北部の傾斜畑に設置して露地野菜三作期の観測実験を行い、表面流出の様子を、昼夜を問わず連続画像として撮影・記録することに成功した。画像の観察と、流出量および土壌由来懸濁物濃度等の水質分析とを併用することにより、観測データの吟味や生起した現象の確実な把握と理解に大きく寄与することが明らかになった。