システム農学
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研究論文
高空間分解能衛星データを用いたガリー侵食域抽出手法の開発
内田 諭南雲 不二男
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2015 年 31 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

ガリー侵食は、降雨によって地表に溝状の構造を形成する現象であり、その発生により土地劣化がもたらされるが、分布や発達の程度を広域的かつ客観的に把握する手法は確立されていない。本研究では、高空間分解能衛星データを用い、画像に現れた特徴を解析してガリー侵食域を抽出する技術の開発を試みた。対象地域は、フィリピン・ルソン島北部のカガヤン川右岸の丘陵地帯に位置するが、ここは近年急速にガリーの発生が顕著になった所であった。使用したのは、空間分解能が0.5 mであるWorldViewパンクロマティックデータであり、主要作物であるトウモロコシの収穫後で地表面の大部分が裸地化する時期に観測されたものを用いた。ガリー侵食域の抽出手法として、衛星画像からエッジ抽出によるガリー候補を抽出した後、ガリー以外の除外域を判別してマスクをかける手順を採用した。ガリー候補の抽出では、Medianフィルタを通しノイズを取り除いた後、Sobelフィルタによってエッジを検出し、さらに、傾斜方向別のコントラスト値によって、傾斜方向に平行なエッジを強調させた。除外域は、同時生起行列(Gray Level Co-occurrence Matrix:GLCM)による画像テクスチャ情報、平均化フィルタ値との差分、及び、標高データから求められる傾斜直交方向の凸度を用い判別した地域とし、さらに、多時期ALOSデータから得られる森林域を除外した。ガリー侵食域の抽出結果を現地測量データと比較したところ、場所により80%程度の抽出率を得る場合と30%程度の場合があったが、全体の平均値は63.4%であり、分布の特徴を把握するためには十分と考えられた。そこで、集水域を単位としてガリー侵食域の分布を表したところ、ガリーの発生が顕著であると報告のあった地域において、ガリー侵食域の面積率が周囲に比べて高いことが示された。

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