システム農学
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研究論文
CFDを用いた仙台平野沿岸部の防潮林が農地の飛砂発生頻度に及ぼす影響の検討
渡部 朱生大風 翼高野 芳央今野 雅持田 灯小林 宏康
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2016 年 32 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

仙台市中心部から20kmほど南に位置する亘理町の農地では、東日本大震災以降、再建したビニルハウスが強風で破損しただけでなく、飛砂や霧の発生が増加したという地域住民の声も聞かれる。この原因として東日本大震災に伴う津波により、気流障害物となって地表面近傍の風速低減に寄与していた防潮林や家屋、屋敷林が失われたことが考えられる。本研究では、亘理町の農地周辺の風環境や復興後の防潮林などが風環境及ぼす影響を把握することを目的として、CFD(Computational Fluid Dynamics: 数値流体力学)を用いた検討を行ったのでその結果を報告する。本研究では、まず、亘理町に位置するAMeDASの観測結果を分析し、風向別の10分間平均風速の超過確率を算出し、Weibull分布で近似した。続いて、国土数値情報を用いて周辺地形を再現した後、復興により嵩上げされる一線堤、内湾堤防、県道を嵩上げして新設される二線堤の形状を再現した上で、防潮林が無い条件(防潮林生育前)及び防潮林が有る条件(十分に生育した状態)を想定し、両条件で風向別に16風向のCFD解析を実施し、防潮林の有無が亘理町の風環境に及ぼす影響を分析した。さらに、亘理観測所のAMeDAS の分析結果及びCFD による解析結果を用いて、防潮林有り/無しの各ケースで飛砂発生頻度の空間分布を算出し、防潮林の有無が飛砂発生頻度に及ぼす影響を推定した。この推定の結果、防潮林の影響により飛砂発生頻度は沿岸からおよそ1kmの領域で25%程度低減していることが分かった。

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