システム農学
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研究論文
近赤外分光法による紫トウモロコシ子実のアントシアニン含量および抗酸化活性の1粒非破壊分析
江口 研太郎玉置 宏之三ツ橋 昇平
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2016 年 32 巻 1 号 p. 19-24

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抄録

近赤外分光法は迅速・簡便な非破壊分析法であり、育種においても利用されている。紫トウモロコシ(Zea mays L.)はフラボノイド系ポリフェノールのアントシアニンを含んでおり、機能性飼料として利用できる可能性がある。仮に、近赤外分光法により紫トウモロコシ子実を破壊することなく1粒毎にアントシアニン含量および抗酸化活性を推定できれば、選抜後にそのまま圃場に播種することができるため、効率的な育種が可能となる。一般的に、近赤外分光法で作成した検量線の推定精度はR 2 V とRPDで評価される。R 2V は検量線評価群の決定係数、RPDは検量線評価群の標準偏差(SD)÷検量線評価群の標準誤差(SEP)で求められる比であり、ともに値が大きいほど精度が高いことを意味する。RPDは2.4~3.0なら準実用的な精度で推定可能と判定される。本試験では1 粒専用カップを装着した近赤外分光分析装置を用いたところ、子実1粒のアントシアニン含量の推定精度は、R2V =0.84、RPD=2.5、抗酸化活性の推定精度はR2V=0.87、RPD=2.7であることが示された。以上の結果から、近赤外分光法により紫トウモロコシ子実1 粒のアントシアニン含量と抗酸化活性を非破壊的に実用的な精度で推定できるため、効率的な育種の可能性が示唆された。

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