システム農学
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研究論文
温暖化が寒地型牧草生産におよぼす影響のモデルによる評価
樽見 恵梨奈築城 幹典森 昭憲
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2018 年 34 巻 1 号 p. 7-15

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抄録

わが国の主要な牧草として広く栽培されている寒地型牧草は、比較的冷涼な気候を好み、暑熱環境に弱い。そのため、北海道を除く広範囲で夏枯れが発生している。夏枯れ地帯は温暖化に伴い北上することが予想され、わが国の牧草地の生産性に大きく影響すると考えられる。そこで本研究では、オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)について、温暖化により平均気温が上昇した際の生産性および草地更新の効果をモデルを用いて評価した。既往の成果をもとに、オーチャードグラスの窒素施肥量、生育期間平均気温および草地更新後年数と乾物収量との関係をそれぞれ定式化し、牧草乾物収量推定モデルを作成した。モデルを用いて、岩手県における平均気温と気温が3℃上昇した場合の草地更新後の乾物収量を3次メッシュごとに求めた結果、気温が高くなると収量の高い地帯の分布が北上した。また、本モデルを用いて、岩手県における温暖化への適応策を検討した結果、生育期間平均気温が1、2および3℃上昇した場合の現在の収量維持のための草地更新サイクルは、それぞれ9、8および7年になった。また、窒素施肥では、気温が1℃上昇時のみ窒素施肥量を150 kgN/haから180 kgN/haに増加させることで収量を維持できた。

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© 2018 システム農学会
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