農業用水の利用実態を把握する上で、水田の取水開始時期を把握することが重要になっている。その取水開始時期を複数のSentinel-2衛星データ(マルチスペクトル画像;無償で利用可能)を用いて広域的に把握する手法を開発した。本手法では、①短波長赤外バンドのデータの解像度アップ、②修正正規化水指数(MNDWI)画像の作成、③二値化画像の作成、④湛水有無の判定、⑤取水有無の判定、⑥取水開始時期の判定、という手順で、圃場毎に取水開始時期を把握する。4月~6月に観測された8つのSentinel-2衛星データと圃場区画データを用いて本手法により対象地区の各圃場の取水開始時期を把握した。その結果、4月14日~4月20日に取水が開始された圃場が最も多かった。対象地区の一部において取水有無の判定結果に関する精度検証と内訳の分析を行った。その結果、5月15日には98%の正答率で取水有無の判定がなされていた。また、6月4日には稲の生育が進んでいた多くの圃場が「湛水なし」と判定されたが、それらは4月~5月に少なくとも一度「湛水あり」と判定されていたので、「取水あり」と判定された。したがって、本手法を適用すると、高い精度で取水開始時期が把握できる。