2023 年 39 巻 2 号 p. 45-55
動物の自由行動下でのエネルギー消費量(EE)を推定するため、加速度データを基に算出した動的体加速度(DBA)が様々な動物種で利用されてきた。また近年では、3軸加速度に加え3軸地磁気や3軸角速度を測定する9軸センサーを用いてEE推定に役立てることも検討されている。DBAを用いて正確にEEを推定するにはセンサーを装着する場所も重要であり、背部といった重心に近い箇所に装着するべきであるとされる。一方で家畜においては、装着が容易なことから各種センサーを首輪に取り付けることが多い。そこで本研究では、9軸センサーをウシとヒツジの背部と首輪それぞれに装着して取得したデータの関係性を調べるとともに、家畜種ごとに背部で得られたDBAを基に算出されるEEを首輪のセンサーデータから推定するモデルを構築することを目的とした。供試動物には黒毛和種繁殖牛4頭およびコリデール種去勢ヒツジ4頭を用い、背部と首輪それぞれに9軸センサーを装着して放牧条件下で24時間のセンサーデータを取得した。まず背部と首輪それぞれから得られたセンサーデータ間の相関解析を行ったところ、家畜種ごとに背部と首輪のセンサーデータ間の相関には共通する関係が認められる一方、特徴的な違いも明らかとなった。次に背部のセンサーデータを基にEEの推定値を算出し、それを目的変数として、首輪に装着したセンサーから導出した各指標を説明変数としたモデルの構築を行った。その結果、両畜種のEE推定モデルにおいて個体効果が有意に選択されたが、個体効果を除いたモデルでも一定の推定精度が得られ、首輪のセンサーデータから得られた指標によるEE推定は可能であることが示唆された。また、3軸加速度センサーのみのデータと9軸センサーのデータすべてを用いた場合を比較したところ、推定精度に大きな差は見られなかったことから、放牧家畜のEE推定には3軸加速度データのみで対応可能であることが示された。