抄録
85歳以上の超高齢者悪性腫瘍に対する放射線治療の意義と問題点を検討した.
【対象と方法】2002年 9 月から2005年 9 月までに放射線治療を施行した85歳以上の患者45例(超高齢者群)の一次効果,有害事象,治療期間中の入院の要否につき分析した.さらに,同期間に放射線治療を施行した照射開始時年齢が75歳であった高齢者69例(高齢者群)と可及的に比較した.
【結果】超高齢者群では男性21例,女性24例,年齢85~99歳(中央値87歳),PS 0-2:30例,PS 3-4:15例.疾患は頭頸部腫瘍(頸部リンパ節転移を含む)10例,肺癌 5 例,悪性リンパ腫 5 例,皮膚癌 4 例,食道癌 4 例,乳癌 2 例,子宮頸癌 2 例,直腸癌 2 例,軟部腫瘍 2 例,転移性骨腫瘍 2 例,その他 7 例であった.治療方針は,根治・準根治照射22例,対症照射18例,その他 5 例.13例(29%)で,通常より縮小した照射野を用いた.41例が照射を完遂した(完遂率91%).入院して照射を行った26例中11例は,通院困難が入院理由であった.通院した19例のうち17例で,通院に家族の付き添いを要した.照射完遂群での一次効果は,根治・準根治照射群ではCR 9 例(47%),PR 7 例(37%),NC 3 例(16%)であり,対症照射群では有効(症状改善あるいはPR以上の腫瘍縮小効果を得られたもの)15例(88%),無効(症状不変あるいはNCであったもの)2 例(12%)であった.有害事象はgrade 3 の皮膚粘膜炎が 1 例に認められた以外はすべてgrade 2 以下であった.また,照射期間中にPS悪化 3 例,認知症増悪 2 例を認めた.高齢者群と比較すると女性患者が多く,PS不良例が多く,通常より縮小した照射野を用いた例が多かったが,完遂率,効果,有害事象のいずれについても有意な差を認めなかった.
【結論】85歳以上の超高齢者悪性腫瘍に対する放射線治療は安全に施行でき,有用性も高い.今後,放射線治療を必要とする超高齢者数の増加が予想され,通院支援など,患者およびその家族の負担を軽減する施策が求められる.