抄録
自己免疫性水疱症を有する患者への放射線照射では水疱症の増悪が誘発されることが多数報告されており,照射には慎重を要する.今回われわれは,乳癌術後に放射線治療を施行した自己免疫性水疱症の 2 例を経験したので報告する.【症例】1 例目は53歳女性.尋常性天疱瘡と診断され,ステロイド内服加療中であった.乳癌を発症し,術後に薬物療法開始.1 カ月観察後,ステロイドの処方を増量し,放射線照射を施行した.2 例目は65歳女性.水疱性類天疱瘡と診断され,ステロイド外用薬にて加療中であった.同様に乳房温存術後は,まず薬物療法を開始した.その後,放射線照射を施行した.いずれの症例も,水疱症の増悪はみられなかった.【考察】自己免疫性水疱症は,腫瘍自体の影響や手術侵襲,薬剤,放射線照射が増悪因子となり得るが,今回の 2 例は紹介時,既に乳房温存術後であり,術後補助放射線療法の施行に際し,慎重なインフォームド・コンセントを要した.2 例ともに水疱症増悪はなく,放射線治療を完遂できた.【結語】自己免疫性水疱症を有する患者に,水疱症増悪なく放射線治療を完遂した 2症例を経験したので報告した.