The Journal of JASTRO
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剖検より見た頚部血管破綻の臨床病理
照射療法の影響を探る
佐竹 文介松浦 鎮境野 宏治前原 康延
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1989 年 1 巻 4 号 p. 213-217

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抄録

頭頚部がんの終末期臨床において, 時に経験される頚部血管破綻による出血を, 剖検材料より臨床病理組織学的に観察し, 放射線治療が血管破綻に及ぼす影響を検討した.1972年から1985年までの頭頚部がん剖検例は255体であったが, そのうち血管破綻例は25例 (9.8%) であった.原発巣別の血管破綻症例は, 下咽頭がん8/32 (25.0%) と最も高く, 次いで口腔がん8/55 (14%), その他9/165 (5.4%) の順であった.破綻部位は殆ど全例が頚動脈分岐部付近であった.25体の血管破綻出血例から見て, 破綻出血の機序は血管周辺に腫瘍の浸潤が認められ, これが皮膚面に潰瘍を形成し, しかもこの部位に70Gy以上の線量が投与されていて, 動脈壁が放射線血管炎を起こしていることの, 二つの条件が噛み合わさって血管破綻が引き起こされると推測された.終末期における疼痛や姑息的な治療としては, 放射線治療は止むを得ない治療法と思われるが, ペインクリニックや化学療法で済むものならなるべく避けた方が良いと思われた.

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© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
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