抄録
従来の胸部X線写真で縦隔の疾患を診断することは,縦隔の形態の変化から起因する肺・縦隔境界線の異常を認識することから始まる. 最近, デジタル胸部撮影の使用が増加し, 今まで中央陰影に重なって描出されていなかった多くの肺・縦隔境界線の描出が可能になってきている. このことは疾患の早期の, そしてより正確な診断が可能になったといえる.放射線治療医は患者の経過観察にしばしば胸部撮影を用いることが多く, 新しい縦隔異常を早く指摘することが要求されている. もし, わずかな縦隔異常を指摘したければ, まず, 正常の肺・縦隔境界線の詳細な理解が必要である. これらの正常および病的状態の肺・縦隔境界線に精通することは胸部X線写真の読影がより正確になることに通ずる. それには日常の診療のなかで, すべての胸部X線写真で, 肺・縦隔境界線, 少なくとも右気管傍線条, 右食道傍線, 左脊椎傍線をチェックすることが重要である
この論文では縦隔疾患の検出に有用な縦隔の形態や肺・縦隔境界線とその応用について解説する.