抄録
山形大学附属病院では頭頸部扁平上皮癌新鮮症例のうち局所進行例を中心にシスプラチンの超選択的大量動注と放射線治療を欝用し, さらに必要に応じて手術も加えた集学的治療を行っている. その局所効果と有害事象について調査した. 対象は1998-2000年に超選択的動注と放射線治療を施行した上顎洞癌10例 (T3;1例, T4;9例), 口腔癌3例 (T2;1例, T4;2例), 中咽頭癌5例 (T2;2例, T4;3例) の計18例である. シスプラチンを週個, 100-150mgずつ超選択的に動注し, 同時にシスプラチンの全身毒性を軽滅するためにチオ硫酸ナトリウムを上大静脈内に投与した. 動注翻数は2-9園 (平均4. 9回), 照射線量は40-70Gy (平均56. 8Gy) であった. CRは上顎洞癌で10例中7例, 口腔癌で3例中2例, 中咽頭癌で5例中2例に得られた. 適宜, 手術を加えた結果, 上顎洞癌と口腔/中咽頭癌の2年局所制御率はそれぞれ80%, 63%で, T4症例に限ると上顎洞癌, 口腔癌/中咽頭癌でそれぞれ78%, 40%であった, 2年生存率は全体で88%, 上顎洞癌で90%, 口腔/中咽頭癌で86%であった. 局所再発の発生例ではいずれも6ヶ月以内に発生していた. チオ硫酸ナトリウム併用により, シスプラチンの全身への毒性は軽慶であったが, 局所の軟部組織に潰瘍や撰孔形成が3例にみられたが, いずれもシスプラチンの総動注量が1,000mg以上または照射線量が70Gyに達する症例であった. シスプラチン超選択的大量動油併期の放射線治療は局所進行頭頸部癌, 特に上顎洞癌の局所制御率および生存率の改善や手術縮小, 根治的手術の適応拡大に有整と考えられた. シスプラチンや放射線の投与量が多いと局所軟部組織の障害がみられることがあり, 注意を要する.