2003 年 15 巻 4 号 p. 291-295
症例は67歳男性, 蛋自尿, 両下肢の浮腫を認め入院した. 臨床上, ネフローゼ症候群を呈しており, 腎病変は膜性腎症であった. 糖査の結果原発性肺癌及び腫瘍随伴性ネフローゼ症候群と診断された. 全身状態が不良であったため, 70Gy/35frの放射線単独療法が施行された. 治療に伴い腫瘍は縮小し蛋白尿は減少, 浮腫は溝失した. 治療後2年間は明らかな腫瘍の再増大及びネフローゼ症候群の再発を認めなかった. 腫瘍随伴ネフローゼ症候群はさまざまな悪性腫瘍において認められるが, 腕癌は最も頻度の高いもののひとつである. 原発巣の治療が成功すれば多くの場合ネフローゼ症候群の改善が得られる. 放射線治療は原発巣が切除不能の場合, 第一選択蕪なり得ると考えられた.