The Journal of JASTRO
Online ISSN : 1881-9885
Print ISSN : 1040-9564
ISSN-L : 1881-9885
Interleukin-2持続動注併用放射線治療中にカテーテル挿入部にMRSAを併発した血管肉腫の2例
脇坂 昌紀不破 信和松本 陽立花 弘之古平 毅古谷 和久鎌田 実森 宣
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 15 巻 4 号 p. 285-289

詳細
抄録

近年血管肉腫に対しInterleukin-2 (IL-2) の有効性が報告されている. 我々はIL-2持続動注併用放射線治療により良好な抗腫瘍効果をえたものの, 有害事象としてmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 感染を生じた血管肉腫の2例を経験したので文献的考察を加え報告する.
症例1は73歳の男性で, 右頭頂部に暗赤色の腫瘤が出現し近医にて血管肉腫と診断され愛知県がんセンター放射線治療部へ紹介入院となった. 電子線照射と両側外頸動脈からのIL-2の持続動注を開始し腫瘍は急速に縮小したが, 左側カテーテル挿入部皮膚より排膿を認めた. 細菌検査によりMRSAが検出されたため, カテーテルを左浅側頭動脈に再挿入しIL-2の動注を続けた. 症例2は75歳の男性で, 頭頂部に結節が出現し近医にて血管肉腫と診断され愛知県がんセンター放財線治療部へ紹介入院となった. 電子線照射と左外頸動脈からのIL-2の持続動注を開始し腫瘍の縮小を認めたが, カテーテル挿入部皮膚より排膿を認めた. 細菌検査によりMRSAが検出されたため, カテーテルを抜去しvancomycinの投与を行った.
これまで我々は頭頸部領域の扁平上皮癌に対してcarboplatinによる選択的持続動注併用放射線治療を行い良好な治療成績を報告したが, 本治療中にMRSA感染を呈した症例は1例も認めなかったことより, 今回報告したMRSA感染はIL-2によって惹起された可能性が高いものと推測される. 血管肉腫に対するIL-2の動注療法においてMRSA感染を生じた報告は我々の調べえた限りではこれまで見られない. しかし, 高用量IL-2の有害事象の一つとして感染症が報告されており, この原因として好中球走化性の欠如や細胞性免疫応答の障害の関与が挙げられている. 予防法として抗生剤の予防投与や, カテーテルをポートごと皮下に埋め込む方法が報告されている.
IL-2持続動注併用放尉線治療はIL-2の投与量や放射線治療との供用の時期など今後検討する課題は多いが, 血管肉腫に対する有効な治療法の一つとなりうる可能性があり, MRSA感染予防のために今後ポートの埋め込みなど動注方法そのものを検討する必要があると思われる.

著者関連情報
© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
前の記事 次の記事
feedback
Top