抄録
前立腺癌67例に対する放射線治療成績の予後と副作用について検討した. 症例の平均年齢は70歳 (48-85) で, 臨床病期分類は, Stage A10例, Stage B24例, Stage C19例, Stage D11例, 不明3例であり, 病理学的分類は, 高分化型腺癌19例, 中分化型腺癌20例, 低分化型腺癌19例, 不明9例であった. 治療方法は, 放射線治療単独18例, 内分泌併用放射線治療が34例, 放射線治療と経尿道的前立腺切除術との併用が13例, 化学療法併用放射線治療が2例であった. 放射線治療は10MVのX線を用いて主に120°振子照射により前立腺局所に照射した.骨盤リンパ節転移に対して, 骨盤リンパ節郭清術を18例に, 放射線治療を6例に行った.
Overall survival (OS) ならびにdisease specific survival (DSS) の5年累積生存率は, 各々70%, 87%であり, 10年累積生存率は各々51%, 87%であった. OSならびにDSSの臨床病期別の5年累積生存率は, Stage A, 100%, 100%; Stage B, 89%, 100%; Stage C, 63%, 81%;Stage D, 37%, 65%であった. 放射線治療による副作用のうち, 早期反応は頻尿 (27%), 排尿障害 (19%), 血便 (8%) 等で, いずれも一過性で副作用のために照射を休止することはなかった.晩期障害は照射野の重なりのためS状結腸に高線量を照射し, 下血を繰り返しDICにより死亡した1例と, 照射野が通常より後方で放射線直腸炎をきたし下血を繰り返し人工肛門を増設した1例であるが, その他の症例では保存的に対処できた. 前立腺癌に対する放射線治療の成績は手術と同等であり, 比較的少ない副作用で安全に行われ, その役割は大きい.