1995 年 7 巻 2 号 p. 151-158
義歯複製法によって作製された義歯型スペーサーの, 放射線骨壊死発生抑制効果が検討された.1978年4月から1992年11月までの間に新鮮T1及T2舌癌を有する55例の無歯顎患者に対して組織内照射を主体とした放射線治療が行われた.スペーサーは1991年以降に治療された12例に用いられた.骨壊死はスペーサーを使用せずに治療された3例に生じたが, スペーサーを用いた症例には発生しなかった.しかし, 骨壊死の発生とスペーサーを用いたこととの間には有意な関係は見い出せなかった.スペーサーを用いた時期に, 外照射の使用頻度を減少させたこと, それによって総線量が減少したことが, その理由と考えられた.本研究では骨壊死発生の減少に対する義歯型スペーサーの寄与は検出できなかったが, 下顎骨への線量の低減はスペーサーを用いることによって期待できる.
したがって, 我々の施設ではこのタイプのスペーサーを組織内照射治療の一部として用いている.