The Journal of JASTRO
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小細胞肺癌脳転移に対する放射線治療後の脳転移・再発様式の検討
村上 昌雄黒田 康正岡本 欣晃河野 康一余田 栄作森 岳樹
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1997 年 9 巻 1 号 p. 37-44

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抄録
脳転移に対する放射線治療の報告は多いが, 最適な治療法の選択に関しては未だ検討の余地がある. 中枢神経系の転移の診断法の発達にともない, 治療上の諸問題を再検討する必要がある. 我々は全脳照射を行った小細胞肺癌脳転移67例のうち, 15例に照射後の脳再発をみとめた. CT, MRIを用いた検討から, 脳再発様式には初回脳転移巣と同じ部位に再発した再燃と, 初回脳転移巣と異なる部位に再発した再脳転移の2つの様式があることを確認した.
(1) 初回脳転移治療時を起点とした予後を比較すると, 15例の脳再発例/52例の非脳再発例の1, 2年生存率はそれぞれ, 47/19%, 13/8%で, MSTは10.8/5.7ケ月であり, 前者が明らかに後者より予後良好であった.
(2) 15例の脳再発の内訳は, 4例が再燃であり, 11例が再脳転移であった. 初回脳転移の奏効期間は再燃例は172±94.4日, 再脳転移例は393-281日であった.再脳転移例は再燃例に比較して初回脳転移数が少なく, LDH値も低値であった.
(3) 脳再発を来した時点で, 11例は癌性髄膜炎を併発していた. 4例には再度の脳照射を行った. 全例が癌死したが, 12例は脳転移, 癌性髄膜炎が死因となり, 3例は胸部再発, 肝転移が死因となった. なお, 2例に白質脳症を認めた. 脳再発を起点とした予後は2-238日であり, 脳再発様式による予後の差は認められなかった. 小細胞肺癌の脳転移に関しては, 通常分割照射 (平均47Gy) を行った場合の脳再発の約3/4は再脳転移であることから, 脳転移だけが遠隔転移巣であるような症例に対しては, 転移巣の制御を目標にした50Gy以上の通常分割照射を行うべきであると考えている.
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© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
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