1989年から1995年6月までに47例 (男性36例, 女性11例) の直腸癌の骨盤内再発に対して, 放射線治療および化学療法, 温熱療法を併用して治療をおこなった. 今回, 併用治療の有効性, 副作用について検討した.
各治療施行例は, 放射線治療17例, 化学療法併用例18例, 温熱療法併用12例であった. 年齢, 初回手術時の病期などの患者背景に3つの治療法では差は見られなかった. 放射線治療は, 全骨盤腔 (内腸骨動脈, 仙骨前を主体) に平均45.5Gyを施行した (一回線量1.5-2Gy). 化学療法は経口5-FU製剤 (11例) またはCDDP, ADMを照射中に一回の投与を施行した. 温熱療法は平均4.5回 (3-6回) 施行した.
30Gy以上照射した45症例での治療の最大腫瘍効果は56.8%(PR例25例) であり, 放射線治療, 化学療法併用, 温熱療法併用で各43.8%, 69.4%, 58.3%であった. 腫瘍径5cm以下を対象とした化学療法併用は, 放射線治療単独に比べて有効であった (P<0.01). また50Gy以上の放射線照射例では化学療法, 温熱療法の併用により最大腫瘍効果が上昇した (p<0.05).
疼痛の改善は, 有痛例29例中22例75.9%(各78%, 87.5%, 70%) に認めた. 各併用治療の間に有意な差は認められなかった. しかし, 無再燃中間期間は放射線治療4ヵ月, 化学療法では6ヵ月, 温熱療法では7ヵ月であり, 併用療法で延長した (P<0.05). 中間生存期間は各群で6ヵ月, 10ヵ月, 7ヵ月であり, PR例, 5cm以下での腫瘍でも放射線単独と併用療法の間には差が見られなかった. しかし, 50Gy以上の照射例では温熱療法併用により生存期間の延長が見られた (p<0, 05).
副作用は25%, 4例 (各17.6%, 27.8%,;33.3%) に現われ, 併用療法で発現率が高くなった (P<0.05). 原発病巣の術直後の合併症を既往に見た14例では8例, 57%に腸管への副作用が高率に現われた (P<0.001).
5cm以下の腫瘍における化学療法の併用, 50Gy以上の照射と温熱療法の併用による適切な治療の選択は苦痛の改善による患者のQOLの向上と生存の延長に役立つと思われた.反面, 併用療法で副作用の発現は増加し, 副作用の予防のためには併用療法の有無にかかわらず十分な初回手術後合併症の既往の確認と治療前の腎の状態, 腸管の位置, そして化学療法での障害増強の可能性の認識および温熱療法での加温技術の向上が必要であると考えられた.
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