抄録
当論文において提示されるのは、英国のベンチャーキャピタリスト(以下VC)への質問票調査に基づく記述的・探索的データである。英国VCの投資後案件に対する関わり方を概観する事により、将来の日本におけるベンチャーキャピタルマネージメントのあり方を考察する事が主たる目的となっている。1997年初頭に174通の質問票が発送され、80人のベンチャーキャピタリストからの回答を得、有効回答率は60%となった。英国では1990年代を通しベンチャーキャピタル業界での競争は激しくなっており、その中で、データが示すところによれば、より若いステージへのベンチャーキャピタル投資が増加すると同時に、VCの投資後案件への関与度合も90年代を通し明らかに増加傾向にある。また、起業家よりの財務諸表等の提出義務は月一回が常識となっており、VCはこの義務を危機的状況発見のシグナルとして利用していると考えられる。