抄録
現在、日本社会のなかに豊富で多様なベンチャー提案というビジネスの種子は存在しているのであろうか。観察対象として東大生に焦点を当て、1995年から98年にかけて315人を対象に調査を行なった。データの分析から、学生の関心がモノからサービスへ移行しつつあり、特に、新サービスを発想する際に学生がインターネットを中心とする情報技術の活用を重視していることが判明した。学生の関心は、エンタティンメント分野、高齢化対策を中心とする医療福祉分野、そして環境分野などにも向けられる。日本の現状は工業社会からポスト工業社会への移行期にあたり、情報技術の利用に関しては、投資額のみが膨らみ生産性に対する貢献が疑問視された米国の1980年代の状況に対応している可能性が高い。サービス化・知識化社会にむけて構造転換を可能にする知的インフラは若年層を中心に形成されつつあり、可能性を生かすための政策、また制度の変革が必要になる。