抄録
本研究は、地域のソフトウェア産業の育成を目的に地方自治体において導入された情報システムの調達方式の適用事例を比較参照して、調達方式の構造的特徴と企業間ネットワークとの関係を明らかにしようとするものである。本研究では特に、ある地方自治体で例外的に採用された「分割発注共同開発方式」というべき調達方式に着目する。それは、モジュール化された契約システムと統合化された協働システムによって特徴づけられ、結果として、その調達への地域のソフトウェア企業の参入と、参入企業同士による企業間ネットワークの形成を促す可能性がある。そのことは、単独での能力に厳しい制約のある零細企業が多数を占め、大手企業を中心とする拘束的な企業間ネットワークが張り巡らされた地域のソフトウェア産業の育成にとって重要である。