日本ベンチャー学会誌
Online ISSN : 2433-8338
Print ISSN : 1883-4949
11 巻
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寄稿論文
研究論文
  • 山田 幸三, 江島 由裕, 黒川 晋
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2008 年 11 巻 p. 11-20
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
    この研究では、日米の中小企業支援施策の認定を受けた技術開発型中小企業の戦略とガバナンスに関する比較分析を試みる。わが国の「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」とアメリカ・Pennsylvania州のベンフランクリン・テクノロジー・パートナーズ(Ben Franklin Technology Partners)プログラムの認定企業を対象に2002年から2004年に実施した郵送質問票調査データの探索的な分析の結果、次の点が明らかになった。家族経営と非家族経営の戦略は日米で違いはないが、トップのビジョナリー行動は日本企業の方が顕著である。創業者経営と後継者経営の比較ではアメリカでは後継者経営の家族の出資比率が非常に高く、日本では創業者経営と後継者経営の間で戦略とトップマネジメント特性に統計的有意差がある。高業績企業の比較では日米ともに探索型戦略をとるが、日本がより探索的で多様な技術蓄積とコスト優位性を強みとし、アメリカはニッチ戦略を徹底する。高業績企業のトップは日本ではビジョナリー行動をとるが、アメリカでは業界知識をもとに分析重視である。
  • 江島 由裕
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2008 年 11 巻 p. 21-30
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
    本稿では新事業開発を通じて発展を目指す中小企業の生存決定要因を戦略・マネジメントの視点から分析している。分析には、郵送アンケート調査と電話調査で収集した1233社の企業の質的データを用いた。その結果、7つの生存決定要因が特定された。 そこでは、業界状況を熟知してコスト競争に巻き込まれず競争優位に戦える顧客ルートや小さな市場の選択が重要な要因として抽出された。企業家的な経営姿勢より堅実なマネジメント要素が際立った。一方、若い企業の場合は2要因が特定された。競争者より早く新商品をマーケットに導入する企業家的経営姿勢が生存の重要な鍵を握っていた。また、危険水域を脱した成長企業が失速・消滅せず存続するには7つの要因が特定された。そこでは、特に脅威の少ない事業環境下で多様な資源・知識を組織的に創造し蓄積する戦略の重要性が示された。全体、若年、成長企業に共通して、顧客との相互作用の設計、構築、発展の重要性が示唆された。
事例研究論文
  • ―木材産業による「取り残された地方」の活性化―
    武藤 信義
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2008 年 11 巻 p. 31-40
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
    地方・都市間の格差是正は、わが国が取り組むべき喫緊の課題の一つである。わが国では「国土の均衡ある発展」を目的に、戦後、様々な地方活性化策が展開されたが、それが有効に作動しなかった「取り残された地方」が画然と存在する。グローバル経済への更なる移行と、財政再建が進行するなか、高知県等(秋田、青森、徳島、鹿児島、和歌山、島根、岩手、長崎、宮崎、等)の大都市圏 から離れた国土周辺に立地する「取り残された地方」は、格差是正策を模索している。しかし、2002年以降の景気回復局面に於いても、有効な格差是正策の発見に、依然、苦吟している。本論文の骨子は、次の通り。①「取り残された地方」が自立的経済を確立できなかった理由の究明 ②地方が保有する資源に着目した地方経済自立の方法論を提起 ③その方法論を「取り残された地方」の典型である高知県に適用 ④高知県保有の有力な経営資源として森林資源に着目。現在、具体的に推進中の木材事業会社の経営革新を実証的に考察し、木材産業による「取り残された地方」の経済自立化を実現することによる、地方・都市間の経済格差是正の可能性を検討 ⑤「取り残された地方」の多くが、豊富な森林資源を有する点に着目し、本論文が提起した方法論が「地方・都市間の経済格差是正施策」として有効であることを主張している。以上の考察の結果として、木材産業活性化による、地方の雇用とGDPの増大を実現し、「地方・都市間の経済格差是正」に資することを目的とする。
  • 松野 将宏
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2008 年 11 巻 p. 41-50
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
    平成17年8月より施行された有限責任事業組合(LLP)法により、人的資源を活用した共同事業化による創業促進が期待されている。本研究では、事例データを用いて、日本版LLP制度による技術移転メカニズムを分析し、新たな技術移転パースペク ティブを考察する。技術系LLPの技術移転モデルを分析枠組として、技術特性、不確実性、資源補完性、複雑性、LLPの組織・制度的要因を分析指標とし、以下の点を明らかにした。技術系LLPでは、実用化段階にあるミドルステージ技術を開発のコアとしており、その応用開発や用途開発、製品化を目的として設立される。産学間で分業しつつ、共同開発を通じてバリューチェーンを構築している。先端技術分野ほど複雑性は高くなく、提携関係も多くない。以上の考察により、技術移転メカニズムの分析においては、制度的要因を含めた包括的枠組で議論する必要があることを指摘する。
  • ―日本の大手電機メーカーのCVC活動を通しての分析―
    長谷川 克也
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2008 年 11 巻 p. 51-60
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
    大手電機メーカー6社の事例研究を通して、日本企業のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC) 活動を分析した。各社とも技術開発の自前主義を補う手段としてのCVC活動を1990年代半ばから展開しているが、その目的は投資益の追求よりも戦略目的を重視するものが多い。情報収集を主な戦略目的とする場合には独立VCに対してLPとして投資する形態が選択され、事業に直結した成果を追求する場合にはベンチャーへの直接投資機能を社内組織として持つ傾向が強いが、直接投資でも相当の情報収集機能を達成できることが多く、いずれを出発点とした場合にもCVCとしての経験蓄積と共に自前ファンドを持つ方向に進むパターンが多いことがわかった。従来からCVCの課題と指摘される外的要因に起因するCVC活動の継続性欠如は、日本企業でも大きな課題だが、CVCは投資回収を前提にした各種戦略目的を追求する活動と位置づけ、目的に適合した推進形態を採用すれば、CVCは外部技術を新規事業に取り込む手段として有力な手法と考えられる。
  • ―分割発注共同開発方式の事例研究―
    林 幹人
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2008 年 11 巻 p. 61-70
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
    本研究は、地域のソフトウェア産業の育成を目的に地方自治体において導入された情報システムの調達方式の適用事例を比較参照して、調達方式の構造的特徴と企業間ネットワークとの関係を明らかにしようとするものである。本研究では特に、ある地方自治体で例外的に採用された「分割発注共同開発方式」というべき調達方式に着目する。それは、モジュール化された契約システムと統合化された協働システムによって特徴づけられ、結果として、その調達への地域のソフトウェア企業の参入と、参入企業同士による企業間ネットワークの形成を促す可能性がある。そのことは、単独での能力に厳しい制約のある零細企業が多数を占め、大手企業を中心とする拘束的な企業間ネットワークが張り巡らされた地域のソフトウェア産業の育成にとって重要である。
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