2009 年 14 巻 p. 3-12
わが国で、開業や創業の動向を把握する際、最も頻繁に使われる「事業所・企業統計調査」には精度上の問題がある。また、「就業構造基本調査」などの異なった調査間で数字上に大きな乖離が生じている。それらの理由は、これらの調査がそもそも開業や創業の動向を捉えるために設計された調査ではないからである。このように、既存の調査や統計では正確な開業や創業の実態を把握できない中で、その国際比較を行い、開業や創業活動の国家経済に及ぼす影響を調査しようとするプロジェクトが、グローバル・アントレプレナーシップ・モニター (Global Entrepreneurship Monitor : GEM)である。GEMの調査結果は、ほぼ毎年の中小企業白書で取り上げられるなど、その調査自体は、次第に広く知られるようになったとはいえ、紹介される調査結果は限られたものにとどまっている。ここでは、GEMがどのような調査プロジェクトであるのかを示し、その後、GEMは起業活動をどのように捉えようとしているのかを紹介したい。