災害後に経済成長が発生する理由については様々な仮説が唱えられているが、本稿では被災した大都市で起業家が増加する現象とその理由を考察する。この問題について東日本大震災で被災した仙台市を手がかりに、3つの側面からそのメカニズムを検討する。第1に、震災に伴う経済的諸要因により震災後の仙台市で起業家が増加している側面を検討する。第2に、災害に伴って向社会的行動による起業動機の増加が発生していることを明らかにする。第3に、災害に伴う起業志望者の社会的ネットワークの拡大、それに伴う社会的ネットワークの高付加価値化という側面を検討する。以上のように本稿では、経済的側面、心理的側面、社会的ネットワーク側面が複合的に作用し、災害後の大都市で起業活動が増加したと主張する。