抄録
近年、日本経済における創業活動の重要性が注目されている。本稿は、この創業活動について、新しく所得と余暇の代替問題を明示的に含む起業モデルを提示し、そのもとで起業の意思決定行動について詳細に分析を行うものである。分析の結果、まず流動性制約が存在しない場合と存在する場合それぞれの起業の条件、そのときの投資規模および余暇比率が求められた。さらに、流動性制約が存在しない場合には保有資産が多いほど資本投入量が減りかつ余暇比率が高まること、流動性制約が存在する場合には存在しない場合に比べて余暇比率が高まることなどが示された。最後に、これらの結果をグラフによって視覚的に確認するとともに、代数的には解を求めることが困難ないくつかの追加的なケースについて数値計算により最適解を求め、より一般的な解の性質を検証した。