日本ベンチャー学会誌
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事例研究論文
中小ものづくり企業の生き残り戦略
―株式会社浜野製作所の産学連携応用と両利きの経営の実現事例―
奥田 聡更田 誠大江 建
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2021 年 37 巻 p. 41-55

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抄録

株式会社浜野製作所(浜野製作所)は1993年に3名で売上高3,000万円の東京都墨田区の零細企業であった。主業である金属加工も日本の中小零細ものづくり企業の典型であるといえよう。浜野製作所はその後、社員数50名、関東圏の金属加工業としては有名な1社として認知されるようになり、天皇陛下(現上皇)が視察にいらっしゃるような会社に成長した。市場規模が右肩下がりの中でなぜ浜野製作所が成長できたのであろうか?その原因を探ることで日本の中小零細企業の活性化の鍵が隠されていると考えた。本稿では中小ものづくり企業の生き残り戦略を明らかにするうえで、浜野製作所の事例分析を行った。下請けを中心としたものづくり企業からものづくり総合支援サービスを形にしたことは中小ものづくり企業経営者の一助になるであろう。 中小企業が生き残るうえでは起業家としての強さと新規事業の創出両面が必要であると考え、エフェクチュエーション理論を戦略遂行と中小企業社長の行動理論の説明として用い、両利きの経営を新規事業の創出戦略を明らかにするために使用した。産学連携で実践的に深化事業から探索事業をくみ上げ、エフェクチュエーション理論に基づく熟達した起業家としての力をもつ中小企業社長が深くコミットし、事業の深化及び探索両面を推進することが確認できた。

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