抄録
この論文では、1995年の「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」で認定された中小企業の経営の特徴について、トップマネジメントを中核とした戦略的決定に焦点をあてて分析する。わが国の成長可能性を秘めた中小企業の経営に関して、経営戦略論の視点から包括的に分析した実証研究は、欧米に比べて十分な蓄積があるとはいえない。郵送質問票調査とインタビュー調査に基づく分析から、次のような結論が得られた。わが国の創造的中小企業は、全体として企業家的なトップを中核として明確な戦略的決定をおこなっている。企業年齢は、創造的中小企業の経営に影響を及ぼし、若い企業の戦略的決定はより企業家的である。家族経営と非家族経営の間に際立った違いはない。家族経営企業の戦略は保守的な防衛型戦略ではなく、企業家的な探索型戦略をとっている。成果の高い創造的中小企業の戦略的決定とトップの特徴は、成果の低い企業と比べてきわだって企業家的である。