抄録
産業発展及び産業競争力の源泉として特定の産業及びその関連産業の集積であるクラスターが注目されているが、本稿では、クラスターを産業の集積ではなく、ベンチャーを創出する「機能」に着目して、「ベンチャー・クラスター」という新たな概念を提示する。「ベンチャー・クラスター」には、知(技術)の供給源、ハード支援機能(インキュベータ、ベンチャー・キャピタル・ファンドなど)、ソフト支援機能(経営コンサルティング、会計支援、人材教育、人材斡旋、ネットワーキング機能など)、産業的・社会的受容、といった要素機能が必要である。
この「ベンチャー・クラスター」の概念を用いて、札幌で現在生じているバイオ分野を中心とした大学発ベンチャーの創出の状況を分析した。その結果、大学発ベンチャーを創出する「ベンチャー・クラスター」または大学発ベンチャーに焦点を当てた「大学発ベンチャー・クラスター」とでも言うべき機能面で多層的で有機的なまとまりをもったクラスターがダイナミックに形成されつつあることが明らかになった。