抄録
本論文は、ベンチャー企業を対象として、戦略的人的資源管理論に強い影響を及ぼしている「資源ベース観」(resource-based view)を適応して、「人的資源管理システムこそが持続的競争優位の源泉である」という立場から考察を行う。特に人的資源管理システムのアウトプットなる従業員コミットメント特性と創発パワーに注目する。創発パワーは、本論者の造語であり「創発的な従業員からの影響力」と定義して使用される。ベンチャー企業の成長ステージごとに必要な人的資源管理施策があることを実証するために、郵送による質問紙調査を実施した。創発パワーは従業員コミットメント特性に影響を与え、スタートアップ期から急成長・安定期に移るにつれてHRM施策の多様性が必要とされることが実証される。ここにベンチャー企業の急成長期以降における戦略的人的資源管理施策の重要性が予見される。