抄録
血中の低比重リポ蛋白が動脈硬化促進の大きな因子であることは諸家の認めるところである. 本研究では動脈硬化進展の状態を免疫組織学的に観察するために, Coon's の免疫螢光抗体法を用いて, 低比重リポ蛋白の動脈壁における分布に検討を加えた.
抗原に用いた低比重リポ蛋白は家兎およびヒトのプール血清より超遠心法にて分離したもので, これを抗原として抗体を作製し, その抗体にFITCをラベルして染色に用いた.
検索に供した動脈壁は対象家兎, 1%コレステロール食負荷家兎および死後2~6時間以内のヒトの胸部大動脈壁である. 標本は凍結切片法によって作成し, ニコンSF型螢光顕微鏡を用いて検鏡した.
成績 1) 対象家兎の胸部大動脈壁は低比重リポ蛋白抗体で全く染色されない. 2) コレステロール食負荷群では染色されるが, その程度はコレステロール食負荷期間の長いものほど強い. すなわち動脈壁へのリポ蛋白の侵入は,脂質の血中濃度と負荷期間の函数として表現される. 3) 低比重リポ蛋白の動脈壁への侵入は内膜側から始まるのが観察された. 4) ヒト成人の動脈壁には内膜側にビマン性あるいは不規則に低比重リポ蛋白の染色がみられるが, 若年者ほど沈着度が少なく, 高齢者ほど沈着度が強い傾向がみられた. 5) ヒト成人の胸部大動脈の中膜部の弾性線維におけるリポ蛋白の存在は特異的でなかった. 6) ヒト乳児の胸部大動脈壁では全層にわたって特異螢光を認めた.