抄録
神経および筋肉疾患の病態解明に免疫学的手法が有用であることに着目し, これらの方法を脳血管障害後遺症患者に導入して本症患者の血清中の抗骨格筋抗体と抗心筋抗体の検出を行った. 予備実験により, 抗原の凍結乾燥は抗骨格筋抗体の検出率の低下をきたすが, 心筋では低下をきたさず, 抗 globulin 消費試験がタンニン酸処理血球凝集反応よりまさり, 骨格筋では腓腹筋を抗原とした場合最も検出率が高かったので, 本試験は新鮮な腓腹筋と凍結乾燥した心筋を抗原として抗 globulin 消費試験によって行った.
その結果, 抗骨格筋抗体は対照よりも患者に高率に検出され, 発作後半年以上経過した例に陽性例が多く, また抗体価が高い患者では下肢の日常生活動作テスト値が有意に低かった. 抗心筋抗体は患者および対照のいずれでも心電図に異常所見を有する例に高率に検出され, また対照のうちの高齢者に有意に陽性例が多く, 患者の陽性例では下肢の日常生活動作テスト値が有意に低かった.
これらの成績から脳血管障害後遺症患者の血清中には抗骨格筋抗体および抗心水筋抗体が存在することは明らかであり, 本症における免疫学的関与の存在が推察された.