動脈硬化
Online ISSN : 2185-8284
Print ISSN : 0386-2682
ISSN-L : 0386-2682
ヒト血漿 Cyclic Nucleotides に関する研究 (第1報)
血漿 Cyclic AMP Phosphodiesterase の微量定量法ならびに健康人測定値について
有田 匡孝
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1976 年 4 巻 2 号 p. 165-177

詳細
抄録
近年 cyclic nucleotide 代謝の各種病態に果たす役割が注目されてきている. 筆者は臨床面からこれを追求するためにヒト血漿のcAMPの分解酵素である cAMP phosphodiesterase (PDE) の微量定量を試み, 健康男女血漿のcAMP-PDE活性について検討を加えた. 測定は Lowry の微量酵素定量法を原理としこれに Scott and Solomon の薄層クロマトグラフィー法を組み合わせて行った. ヘパリン加静脈血2mlを採血し血漿を分離, 冷凍保存し, 測定時は常温にもどし血漿10μlに Tris-HCl buffer, 8-3H cyclic AMP, snake venom, 10mM MgCl2からなる reagent mixture を加え, 37℃で30分間 incubate 後, Polygram Cell DEAE薄層クロマトグラフィーにて adenosine, cAMP, 5′ AMPの分画に分けその count を測定した. さらに至適測定条件を確認するために血清と血漿の比較, 基質濃度, 血漿分離操作までの冷却放置時間, incubation time, snake venom 添加時期について検討を加えた. その結果により決定した測定条件下でヒト血漿cAMP-PDEの測定を行い2つの Michaelis 定数 (Low Km 2.4×10-7M, High km 1.19×10-5M) を得た. この測定法にて健康男子33名, 女子47名の血漿についてcAMP-PDE活性の測定を行い, 男子は2.23±0.19pmole/ml/min, 女子は1.37±0.13pmole/ml/minの値が得られ, 女子は男子に比し有意の低値 (p<0.05) を示す結果が得られた. 年齢別の検討では男子は年齢によって変化せず, ほぼ一定の活性値を示したのに対し, 女子は20~29歳にて1.00±0.11と低い活性値を示し, 以後年齢をますに従って活性値は上昇し, 60歳台以上ではほぼ男子と同じ活性値を示した.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本動脈硬化学会

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/
前の記事
feedback
Top