財務諸表監査におけるリスク・アプローチは,監査人が重要な虚偽表示のリスクを評価し,評価したリスクに基づいて実証手続の計画と実施を行うことを基本的枠組みとする。ただし,重要な虚偽表示のリスクの評価の基礎となる監査証拠,および実証手続によって得られる監査証拠は,監査人が認識したことを前提とするため,監査証拠の未認識のリスクが必然的に生じる。また,本来は実証手続の実施前の概念である監査リスクを事後的な概念としてとらえ,これを未認識のリスクと関連づけることにより,摘発リスクの異相を観察することができる。さらに,リスクを不確実性ととらえれば,過剰監査のリスクが認識される。これらのリスクは,監査の失敗のリスクを高めるものに限定されず,適切にマネジメントを行うことにより,監査の有効性と効率性を高め,監査人自身のリスク・マネジメントに寄与すると考えられる。