抄録
近年,非財務情報の開示・保証の重要性は世界的に高まっており,それらを支える内部統制の重要性も今後ますます高まることが予想される。2023年の内部統制基準等の改訂における,内部統制の目的に関する変更(財務報告の信頼性から報告の信頼性への変更)は,制度として新たに企業に非財務情報の報告に係る内部統制の構築を求めるものではない。しかし,非財務情報の重要性の高まりに鑑みると,企業は報告の信頼性に変更されたことの意義を積極的に捉え,自発的に非財務情報の報告に係る内部統制の構築に取り組んでいくことが求められる。そこでは,財務報告に係る内部統制への取り組みの経験を活かしつつ,自社との直接的な結びつきが薄い組織にも目を向けた組織構造の確立や,より広い範囲・時間軸をカバー可能なリスク評価とそれに応じた統制活動の設計,専門性を備えた人材の確保といった課題に対応していく必要がある。