北海道東部の池田町と中標津町において1990~1993年にかけてカラス類の標識調査を行った.放鳥数は池田町ではハシボソガラス141羽,ハシブトガラス106羽,中標津町ではハシブトガラスのみ75羽で,このうちハシボソガラス7羽,ハシブトガラス11羽が,北海道内の各地で回収された.平均(±標準誤差)移動距離はハシボソガラスが80.3(±12.7)km,ハシブトガラスが76.3(±10.1)kmで両種間に差はなかった.再捕獲されるまでの期間はハシボソガラスが402.4(±79.9)日間,ハシブトガラスが142.5(±49.2)日間で差はなかった.再捕獲の方法はハシボソガラスでは銃器が4羽(57%),罠が3羽(43%),ハシブトガラスでは銃器が3羽(27%),罠が8羽(73%)であった.再捕獲時の推定年齢についてはハシボソガラスが0~4歳まで,ハシブトガラスが0歳と1歳で,ハシブトガラスの方が0歳の割合が高かった.今回の移動の結果では,放射状に移動していたこと,放鳥個体が幼鳥であったことなどから分散による移動であると思われる.