親鳥の繁殖地への帰還率と雛の出生地への帰還率は,その種の繁殖生態及び個体群動態を理解する上で重要な情報である.青森県三沢市の小川原湖湖畔の疎林において,2015–2018年にニュウナイスズメPasser cinnamomeusの親鳥計19羽と巣内雛計220羽を標識し,2019年までの帰還記録を基に帰還率を算出した.親鳥の帰還率は52.0%(n=13/25)で,全ての帰還個体が繁殖した.巣立ち雛では,出生1年後の帰還率は5.9%(n=13/220)と他の渡り性スズメ目よりもやや低く,帰還個体は雄が多い傾向があった.帰還営巣率は,出生1年後が0.5%(n=1/220)と最も低く,出生2年後が2.5%(n=5/202)と最も高かった.すなわち,本種の1歳個体は配偶者および営巣場所をめぐる競争力に劣っている可能性がある.