日本鳥類標識協会誌
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論文
標識したカワウのコロニーからの長距離移動
福田 道雄
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1994 年 9 巻 1 号 p. 5-10

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抄録
東京都上野公園不忍池のコロニーに住むカワウの,日常的な行動範囲はコロニーから30~40km以内とみられる。この範囲を越える50km以上離れた地点で,7羽のカラーリングを装着したカワウが観察確認または回収された。それらが出生コロニーから消失したのは2~11カ月齢であった。関東地域に生息するカワウは定住していたが,幼鳥がより遠方まで移動するという3種のウ類についての報告と同じ傾向を示していた。不忍池コロニーのカワウは,100km以内の移動は短期的な放浪で,出生コロニーに帰還することも多く,200km以上の移動は分散で,他のコロニーに住み着いてしまうことが多いと考えられる。これらのことには,不忍池の200km以内に,個体の行き来のあるコロニーが無いという立地条件が大きく影響していた。さらに,不忍池のように定住したカワウでも、生息地域内での羽数の増加やコロニーや塒が複数化することで,移動・分散しやすくなるとみられた。
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© 1994 日本鳥類標識協会
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