本論文では,豪雨災害時の早期避難促進ナッジの検証のために広島県で行われたランダム化比較試験の結果を用いて,先行研究の主要な結果の再現と異質性の分析を行った.主な結果は次の通りである.第一に,先行研究はメッセージの効果を約2%~4%ポイント過少に推定していた.しかし,結論は変わらず,避難行動の外部性の情報を伝え,損失表現を用いて利他性に訴えかけるメッセージが最も効果的であった.第二に,機械学習の手法を用いた分析の結果からは,ナッジの効果に異質性が存在するとは言えないことが明らかとなった.第三に,避難場所にネガティブな印象を持つ人には,避難場所への避難の便益を利得表現で伝えるメッセージがより効果的であったが,同じ内容を損失表現で伝えるメッセージでは異質性は見られなかった.第四に,地域コミュニティとの関わり方によって効果に異質性が存在したが,職場コミュニティではその異質性は見られなかった.