行動経済学
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論文
小学校時代の課外・学校外活動と学業,非認知能力,将来の成果との関係―運動と音楽の選択に着目して―
久米 功一鶴 光太郎佐野 晋平安井 健悟
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2025 年 18 巻 p. 89-113

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抄録

本稿では,小学校時代の課外・学校外活動の選択に関連する要因とその成果に関して実証的に分析した.具体的には男女別に運動と音楽の経験を分析してその違いを明らかにした.運動や音楽の活動の参加に関しては,とくに父親の学歴が影響していた.運動の選択には,交友関係の強さや地域行事への参加といった社会関係資本との関係がみられ,音楽の選択には,暮らし向き,家族でコンサートに行く,読書の経験といった文化資本が関係していた.運動や音楽の経験の成果としての学業成績,非認知能力,学歴・賃金などに対しては,運動と音楽のどちらもやらないよりも,運動と音楽のいずれかを選択したグループの成果が高かった.また,運動,音楽は,性別や尺度によって異なる成果と関係していた.例えば,男女とも運動を選択したグループの賃金は高い一方,男女とも音楽を選択したグループでは小学校の学業成績が高かった.非認知能力については,女性の場合,運動を選択した人は音楽に比して外向性や競争選好が高く,これが賃金に対する影響に結び付いている可能性が示唆された.運動,音楽両方を習った人は,子供側の負担が高く,男女とも片方だけやる場合よりも尺度によっては成果のスコアが低いことも確認された.

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