行動経済学
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論文
双曲割引と消費行動
—アンケートデータを用いた実証分析—
盛本 晶子
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2009 年 2 巻 p. 49-59

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抄録

双曲線型割引関数を持つ個人は,過剰消費の誘惑という自己統制の問題を抱えている.賢明な個人は,この誘惑に打ち勝つためにコミットメント手段を利用する.流動性の低い資産での貯蓄は過剰消費を防ぐために有効なコミットメント手段だが,このコミットメント手段を利用することは,流動性の高い資産からの限界消費性向の上昇·流動性の低い資産からの限界消費性向の下落に繋がる.それゆえ双曲線型割引関数を持つ個人の限界消費性向は資産の流動性に依存して異なる.本稿では,2005年から2007年の間に日本国内において大阪大学が実施した「暮らしの好みと満足度に関するアンケート」を用いて,家計の割引構造と限界消費性向との関係を検証した結果,双曲線型割引関数を持つ家計はそれ以外の家計に比べて,所得の変化が消費量に与える影響は大きい一方で,固定資産残高の変化が消費量に与える影響は小さいということがわかった.

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© 2009 行動経済学会
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