抄録
人生満足度評定におけるアイテム・オーダー効果について調査するため2つの実験を行った.実験1では日本人とアメリカ人の被験者を人生全般の満足度の前に様々な人生領域の満足度を回答する条件と人生全般の満足度の後に様々な人生領域満足度に回答する条件のいずれかに割り当てた.アメリカ人の被験者は日本人に比べて最も満足している人生領域を重視して人生全般の満足度を評定した.特に,人生満足度判断の前に様々な人生領域の満足度に回答した条件で,その傾向は顕著であった.一方,日本人の被験者は全般的にアメリカ人の被験者に比べて,最も満足していない人生領域を重視して人生満足度を評定した.日本人のこの人生満足度評定のパターンは日本人が常時他者の考えを注視しているためかもしれない.そこで,実験2ではこの仮説を検証するため,日本人の被験者を他人から見られていなかった経験を喚起する条件と他人から見られていた経験を喚起する条件に無作為に割り当てアイテム・オーダー実験を行った.予想通り,他人から見られていなかった経験を喚起された被験者は,実験1のアメリカ人と同様に最も満足度の高い人生領域を重視して人生全般の満足度を評定した.