行動経済学
Online ISSN : 2185-3568
ISSN-L : 2185-3568
6 巻
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
論文
  • 黒川 博文, 大竹 文雄
    2013 年 6 巻 p. 1-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/30
    ジャーナル フリー
    本稿では『国民生活選好度調査』を用いて,幸福度,満足度,ストレス度の年齢効果について分析した.横断データでは年齢効果と世代効果を識別できないため,年齢効果の形状が世代効果の影響を受けている可能性がある.実際,世代効果と年効果を無視すると,幸福度と満足度の年齢効果は若い頃は高く,中年期にいったん低下し,高齢になると上昇するといったU字型を示し,ストレス度の年齢効果は加齢とともに減少するといった右下がりを示した.しかし,世代効果と年効果を考慮すると,幸福度の年齢効果は右下がりとなり,ストレス度の年齢効果は右上がりとなるが,満足度の年齢効果はU字型のままであった.さらに,もともと年効果にトレンドがあると,年齢効果および世代効果にトレンドの影響が出てしまう可能性があるため,それらのトレンドの影響を除いた分析も行った.その場合,幸福度の年齢効果はU字型を示し,ストレス度の年齢効果は逆U字型を示した.
  • Fumio Ohtake, Masaru Sasaki
    2013 年 6 巻 p. 37-46
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/11
    ジャーナル フリー
    This paper estimates the factors affecting the relationship between the wins and losses of corporate sports club teams and the work morale of employees, using an original survey of employees from a selected Japanese automobile maker. We find that corporate sports club teams' performance is an important factor influencing the work morale of older employees and employees who work with colleagues belonging to those teams in the same division. We can say statistically that the impacts of teams' wins and losses on changes in work morale of older employees at the individual level are symmetric; that is, the work morale of employees is significantly raised by own teams' wins but reduced by own teams' losses.
書評
第7回大会プロシーディングス
  • 大竹 文雄, 大垣 昌夫, 金子 守, 齊藤 誠
    2013 年 6 巻 p. 50-61
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
  • 近藤 隆則, 白須 洋子, 三隅 隆司
    2013 年 6 巻 p. 62-65
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    国債や投資信託や生命保険が銀行の窓口で販売されるようになって久しい.本論文は,アンケート調査によって得たデータから,銀行窓販で各種金融商品を購入した個人の特性を銀行以外での購入者と比較して統計的な分析を行った.本論文によって明らかになった銀行窓販ユーザーの特性は,第1に,銀行以外での購入者と異なり,彼らは心理変数の差による商品選択に違いが見られず,各種商品を疑似的な預金と見做す傾向がある.第2に,しかしそれは必ずしも銀行の影響によるものとは言えず,個人の主体的選択に基づくものである.第3に,リーマン・ショック期には他商品から国債へ資金が逃避するFlight to qualityが起きていたことが観察され,特に定期預金の購入者にその傾向が強く見られた.
  • 参鍋 篤司
    2013 年 6 巻 p. 66-69
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    本稿では,企業別の賃金関数を計測することで,企業内賃金分散・年功賃金・効率賃金の三つのインセンティブ指標を計算しそれらの影響を実証的に検討した.結論は,以下の通りである.企業内賃金分散指標の高まりは,努力水準を高める一方で,勤続希望度を低下させる.逆に,効率賃金指標の高まりは,努力水準を低下させる傾向のある一方で,勤続希望度を上昇させる.年功賃金指標の高まりは,努力水準及び勤続希望度双方に対して正の効果を持っている.企業が長期的な視野に立つ重要性が高い場合,年功的・効率賃金的な賃金政策が採られ,逆に,短期的な視野では企業内賃金分散を強化することが有利になることを示唆している.また成果主義賃金制度の導入理由を考慮し,プロペンシティ・スコアを用いた分析では,成果主義賃金制度の導入が残業時間を減少させることが分かった.
  • 犬童 健良
    2013 年 6 巻 p. 70-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    アレの背理(Allais' paradox)は期待効用理論によって説明できない現実の人々のリスク選択を示す例題として知られる.プロスペクト理論や後悔理論はアレの背理を説明できる代替理論だが,問題によってモデルが変化することを系統的に説明できない.本論文では可能な結果の比較についての注目の強さをオプションごとに追加的に質問した.実験結果からは,後悔への注目は安堵よりも強いこと,後悔が生じる比較ではリスクをとる人は安全を選ぶ人よりも注目が強いこと,および確実な金額との比較において後悔が双焦点であるかどうかが,共通比効果の有無や共通結果削除後の選択に影響することが見い出された.
  • Hirofumi Kurokawa, Fumio Ohtake
    2013 年 6 巻 p. 74-77
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    This paper reveals the process of solving a time discounting task with eye tracking. There is a hypothesis that time discounting anomalies such as present bias result not from calculating present discount values of smaller-earlier and larger-later rewards, but from separately comparing attributes such as the timing of receipts and the amounts of rewards. However, our eye movement data show that the proportion of saccades when comparing each option holistically, which implies subjects calculate present discount values, is significant large and is nearly equal to that of saccades when comparing attributes separately. The saccade comparing an earlier option holistically is initially a high likelihood, and then the saccades gradually combine the saccades comparing each option holistically with the saccades comparing attributes separately at the same likelihood. Combining our experimental results and previous research, we support the attention-focusing hypothesis, which implies that when the timing of receipts is written as a delay, subjects are more prone to calculate the discounting rate than when it is written as a date.
  • 江本 直也
    2013 年 6 巻 p. 78-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者に行動経済学的アンケートを実施し,神経経済学的観点から患者の価値判断,行動性向の分析を試みた.糖尿病は絶対的インスリン分泌不全で生活習慣とは関係しない1型と生活習慣が原因の2型に分類されるが,1型に較べて2型ではリテラシー能力の低い患者の比率が高く,さらに問題の先送り傾向が重なると腎合併症が進行することが示唆された.この結果は2型糖尿病の病態を理解する上で極めて重要な情報である.
  • 大竹 文雄, 木成 勇介, 水谷 徳子, 森 知晴
    2013 年 6 巻 p. 81-84
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    本論文では,経済実験を用いて,競争と再分配行動の関係性について検証した.実験では,被験者は4人1グループとなり,それぞれ迷路を解く.報酬はその正解数に応じて順位報酬制または歩合制で支払われる.報酬額の決定後,被験者はそれぞれグループのメンバーに対して自分の報酬から報酬移転を行う.先行研究であるErkal et al. (2011) は順位が1位の人より2位の人ほうが移転が多くなるという結論を示したが,本実験ではそのような結果は見られず,単純に順位・報酬が高いほど移転が多いという結果が得られた.また,実験後のアンケートに基づいて作成した平等選好は移転に正の,競争選好は負の影響を与えていた.これらの変数は,報酬移転の存在による生産性の変化には影響を与えておらず,他者に対する選好によって生産性が変化し順位を変動させるというErkal et al. (2011) が主張するメカニズムを確認することはできなかった.
  • 佐伯 政男, 大石 繁宏, Minha Lee, 前野 隆司
    2013 年 6 巻 p. 85-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    人生満足度評定におけるアイテム・オーダー効果について調査するため2つの実験を行った.実験1では日本人とアメリカ人の被験者を人生全般の満足度の前に様々な人生領域の満足度を回答する条件と人生全般の満足度の後に様々な人生領域満足度に回答する条件のいずれかに割り当てた.アメリカ人の被験者は日本人に比べて最も満足している人生領域を重視して人生全般の満足度を評定した.特に,人生満足度判断の前に様々な人生領域の満足度に回答した条件で,その傾向は顕著であった.一方,日本人の被験者は全般的にアメリカ人の被験者に比べて,最も満足していない人生領域を重視して人生満足度を評定した.日本人のこの人生満足度評定のパターンは日本人が常時他者の考えを注視しているためかもしれない.そこで,実験2ではこの仮説を検証するため,日本人の被験者を他人から見られていなかった経験を喚起する条件と他人から見られていた経験を喚起する条件に無作為に割り当てアイテム・オーダー実験を行った.予想通り,他人から見られていなかった経験を喚起された被験者は,実験1のアメリカ人と同様に最も満足度の高い人生領域を重視して人生全般の満足度を評定した.
  • Sunyoun Lee, Byung-yeon Kim, Hyeog Ug kwon, Hyoung-seok Limd, Masao Og ...
    2013 年 6 巻 p. 88-92
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    The main purpose of this paper is to study how the individual differences in implicit worldviews regarding categories versus relationships affect altruistic behavior towards parents, children and non-family members, using the survey data of Korea, Japan and the US. We found international differences that are consistent with Nisbett's theory that Easterners tend to use relationships more than categories compared with Westerners. We found statistically significant effects of implicit worldviews on some altruistic behaviors. We also found confidence in spiritual beliefs in explicit worldviews have significant effects on some altruistic behaviors.
  • —法人税率変更と企業行動の行動経済学的な分析—
    久米 功一, 小林 庸平, 及川 景太, 曽根 哲郎
    原稿種別: プロシーディングス
    2013 年 6 巻 p. 93-96
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    本稿では,仮想的な質問で得られた,法人税の増税や減税に対する企業行動の違いについて,リスクシェアリング,調整・取引コスト,法規制,赤字企業,非流動資産比率に着目して探索的に分析した.その結果,企業と従業員はリスクをシェアしており,売上高が大きく,流動資産が低く,赤字であり,労働法制を配慮している企業ほど,法人税の増減に対する対応に非対称性があることがわかった.
  • 小松 秀徳, 西尾 健一郎
    原稿種別: プロシーディングス
    2013 年 6 巻 p. 97-100
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    省エネルギー・節電を促進する方法として,高効率機器の導入だけでなく,情報や料金によって行動変容を促す方策がある.近年,選択の自由を害することなくより良い選択をするよう促す行動変容方策として「ナッジ」が注目されている.本稿では,学術的文脈でのナッジの基礎検討,およびその応用例である家庭向け省エネルギー・節電促進策がどのように進められているかについて,近年の動向を述べる.
  • 藤森 裕美
    原稿種別: プロシーディングス
    2013 年 6 巻 p. 101-104
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    意思決定理論の分野では,感情はリスク選好のプロセスに影響を及ぼすことが指摘されている.Shafir (1993)やShafir–Simonson–Tversky (1993) は,効用最大化モデルの代替理論として「理由に基づく選択(Reason-based Choice)」仮説を提唱した.この「理由に基づく選択」をてがかりにリスク選好のプロセスについて議論を展開してみたい.本稿では,帰結のリスク志向行動は,受動的リスク志向へ向かうルートと能動的リスク志向へ向かうルートに違いがあると仮定する.ここで問題となるのがリスク志向行動は,表面的には受動的か能動的か区別がつかないことである.そこで,脳科学的手法を用いたニューロエコノミクス実験を行った.機器は,前頭皮質部分の血流量変化を計測できるfNIRSを用いた.実験データの分析結果から,その差は統計的に有意であった.
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