行動経済学
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第8回大会プロシーディングス
蟻とトレーダーとファットテイル—Kirman (1993)モデルの応用—
佐野 一雄
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2014 年 7 巻 p. 32-36

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抄録

アリの巣の近くに同じ条件で二つの砂糖の山をおくと,アリはどのように群がるだろうか? Kirman (1993)はアリの社会的な集団現象のプロセスを簡単なモデルで説明し,興味深いシミュレーションを行った.証券市場におけるファットテイル現象はよく知られているが,その原因はまだ十分に解明されていない.Nirei and Watanabe (2014)が,やはりKirman (1993)の延長線上に,ファットテイル現象のミクロ経済学的な基礎づけを試みているものの,MLRP,リスクニュートラル,右上がりの需要曲線,自動的な供給など,モデルに不可欠な強い仮定が多く,その理論構造はきわめて複雑である.本稿では,単純な証券市場のモデルを設定し,Kirman (1993)のモデルを応用することで,価格変化に見られるファットテイルを再現する.Kirman (1993)およびNirei and Watanabe (2014)と同様に,Keynes (1936)の美人投票モデルを念頭に,経済主体の独立性と相互依存性のバランスがファットテイルの原因であることを示す.

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© 2014 行動経済学会
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