集団的自衛権に関する日本の世論調査の結果は調査によって大きな違いがある.著者らは,調査結果の違いが,質問紙上の選択肢の分割によって生じていることを示す.著者らは自然実験と統制実験によって,集団的自衛権について“行使容認”と“現状維持”の計2つの選択肢を用いた調査と比べ,2つの行使容認の選択肢—“憲法変更による行使容認”と“憲法解釈変更による行使容認”—と1つの“現状維持”の計3つの選択肢を用いた調査は,行使容認の選択率が高い調査結果をもたらしやすいことを示した.分割された個々の行使容認の選択肢は回答者にとっての心理的な利用可能性を高め,選択肢全体があらわす態度の範囲が拡大したことによって,これらの選択肢の選択割合が増えたと考えらえれる.集団的自衛権の世論調査についての政治学的インプリケーションが論じられた.