2014 年 7 巻 p. 67-70
本稿では仮想的な質問によって,恒常所得の変化時にどのような消費行動の変化が期待されるかを知ることができる「くらしの好みと満足度についてのアンケート」のパネルデータを用いて,「合理的習慣形成と整合的な消費パターンを選好する世帯」をピックアップしたサンプルを構築したうえで,Dynan型オイラー方程式による習慣形成仮説の検証を行った.そして得られた結論は,「合理的習慣形成と整合的な消費パターンを選好する世帯」サンプルからですら,習慣形成仮説と整合的な結果は得られないというものであった.しかも習慣形成パラメータの推定結果は,「習慣形成を選好する世帯」「習慣形成を選好しない世帯」で大きく異なるとは言えず,その理由の探索が今後の課題である.