抄録
効率的な都市の防災対策を考える際,正確な費用対便益の検討と共に,危険な地域に住む住民にはどのような特徴があり,災害リスクに対してどのような反応をするのか把握することは,とても重要なことである.本研究では,東京都に住む3,000世帯を対象にアンケート調査を行い,住民の災害リスクに対する反応を把握した.その結果,危険な地域では,所得水準が低い家計が集中する傾向にあり,客観的リスクの認知率も高い傾向にあった.また,本研究では,防災対策を実施する誘因を,プロビット分析を用いて検討した.その結果,住民の時間割引率の効果が居住地域の危険度によって変わることが示唆され,さらに,所在各地域の耐震改修率が有意に影響していることから,周辺地域の環境が強く影響することが示唆された.