2017 年 9 巻 p. 102-105
本研究は,一般的信頼,互恵性,利他性などのソーシャル・キャピタルが,所得・従業上の地位・管理職という労働市場でのアウトカムと幸福度に与える影響を個人に関する独自のアンケート調査をもとに検証した.ソーシャル・キャピタルの内生性に対処するために,小学生の頃に通学路および自宅の近隣に寺院・地蔵・神社があったか否かという変数を用いた.分析結果は操作変数法の有効性を示しており,推計結果からはソーシャル・キャピタルが高くても労働市場でのアウトカムには影響しないが,幸福度および健康水準を高めることが示唆された.また,労働市場でのアウトカムを高めない理由として,ソーシャル・キャピタルが高いと地域間移動が減少するという事実を示した.