哺乳類科学
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原著論文
機械学習法を用いたエコーロケーションコールによるコウモリの種判別
増田 圭祐松井 孝典福井 大福井 健一町村 尚
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2017 年 57 巻 1 号 p. 19-33

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抄録

群馬県みなかみ町にて捕獲した3科7属11種のコウモリ類(アブラコウモリPipistrellus abramus,ユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus,ヒメホオヒゲコウモリMyotis ikonnikovi,カグヤコウモリMyotis frater,モモジロコウモリMyotis macrodactylus,テングコウモリMurina hilgendorfi,コテングコウモリMurina ussuriensis,キクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinum,コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,ヒナコウモリVespertilio sinensis,ニホンウサギコウモリPlecotus sacrimontis)のエコーロケーションコールから,コウモリ類専用の音声解析ソフトウェアSonoBat 3.1.6pを用いて,コールの開始・終了時の周波数や持続時間をはじめとする75種類の特徴量を自動抽出し,Random ForestおよびSupport Vector Machineの2種類の機械学習法を階層的に組合せた識別器を構築し,種判別を試みた.その結果,6,348のコールに対して10×10分割の入れ子交差検証で評価したところ,属レベルで96.3%(SD 0.06),種レベルで94.0%(SD 0.06)の正答率で判別ができた.また,大阪府吹田市北部の屋外で収録したエコーロケーションコールに対して,構築した識別器を適用してコウモリ類の種を推定し,活動の分布を地図化するプロセスを開発した.これらの結果をもとに,考察ではデータの追加に伴い識別器の精度が向上する可能性があることと種内変異が識別精度に大きな影響を与えることを議論した.フィールドへの適用では,識別器でコウモリ類の空間利用特性を把握し,地理情報と連携させることの有用性を議論した.最後に,エコーロケーションコールに対して機械学習法を用いた種判別と音声モニタリングをする際の今後の課題について述べた.

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© 2017 日本哺乳類学会
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